月夜見

    秋のお日和 〜大川の向こう

 
今はハッピーマンデー法とやらで第2月曜日に移行されてしまった“体育の日”だが、
以前は10月10日と固定されており。
何故その日に制定されたのかと言えば、
1964年に開催された東京五輪の開会式の日だったから。
では、どうしてその日と定められたのかと言えば、
過去の記録をさかのぼっても ほぼ晴れという“特異日”だったからだ…と言われているが、
実を云うと“特異日”と言われるほど%が高かったわけでもないらしく、
ただ、直前まで結構な雨天だったのが
当日はからりと晴れて、それは素晴らしい日本晴れとなったというから物凄い。
(当時のデータで割り出したなら、むしろ14日のほうが晴れる確率は高かったとか。)
昨今では、それも地球温暖化の関係か、
ゲリラ豪雨だの爆弾低気圧だのと
想定外な規模や桁のとんでもないお天気も押し寄せる日本だが、
それでもこの“晴れの特異日”はなかなか崩れない法則だそうで。

 「昨日の晩の天気予報で、予報士のお兄さんが、
  最近の統計で言えば、10月18日も特異日と言っていいほど晴れが多いんだと。」

 「へぇえ〜。」

まま、台風でも来ない限り、
10月は空気も乾燥していて、それは過ごしやすい秋晴れの日が多そうで。
それが証拠に、というのも何だが、

 「確かに、昨日はちょっと強い雨も降ったのに、
  今日は朝からいい天気だもんなぁ。」

今年の体育の日前後の連休も、
関西ではいいお日和でしたが、東京の方では微妙に曇りがちだったものが、
14日はすっかり回復したらしいですしね。
ちなみに 特異日は他に
4月6日が花冷えの特異日とか、
6月1日と11月3日が晴れの特異日、
9月12日が 雨の特異日なんて言われてまして。
9月のは個人的にヤなことがあった日で、
そこへとんでもない土砂降りなったんでよく覚えておりますよ、ええ

 「…おいおい。」

それはともかく。(苦笑)
晴れ間がなかったわけじゃなし、
何より“連休”というのは、大人の皆様には大助かりな要素ということで。
こちら、中洲の小さな里におかれましては、
毎年恒例、小学校と町内会との合併という格好の大運動会が
体育の日がらみの連休に にぎにぎしくも催されたそうでvv
小学校の方の、クラス別・学年別 お子様たちの競争は
微笑ましくも穏便に進められたものの。
何丁目ごとに区切られたチーム戦は、
結構熾烈な戦いもいくつかあったらしく。
後世、もとえ、来年まで語り継がれることだろうなんてな、
一大対決もあったらしい。

 「レイリーさんは今年も中立だったねぇ。」

 「そりゃあそうだろう。
  あのお人が出て来ては、
  赤髪さんとこの若い衆らも実力発揮しにくかろうし。」

 「ルフィちゃんは元気いっぱいだったけどね。」

 「そっちはそうでなくっちゃあ♪」

そして、それからわずかに一週間後の今日本日、
さすがは特異日、やっぱりいいお日和の下では、
鎮守の社のお祭りが、縁日屋台も出てのにぎやかに催されており。
屋台の幌の陰がはためくまま躍る 乾いた参道に、
大町からの見物も多数集める中、
子供らが元気に担ぐ小さなお神輿と、
祀られている神様の由来を彫った彫刻だの、
五色七彩を豊かに使った織物の飾りだのをまとった、
ちょっと意外なほど立派な山車が押し出され。
そろそろ色づきの始まった木々が寄り添う
なだらかな坂道を、多くの氏子らが引いて大きな山車が登ったり、
大川沿いの 葦の茂る涼やかな風景の中を、
子供らのわっしょいの声とともに
一丁前なお神輿もそれは軽やかに弾んだり。
優しい原風景の中で繰り広げられる、それは素朴なお神輿の行幸へ、
地元の衆だけじゃあなく、大川の方から来た顔ぶれも
笑顔でデジカメを構えておいでで。

 「そういや、奉納のお相撲に、
  今年もルフィちゃんは出るのかい?」

 「本人は張り切ってたけれどもねぇ。」

秋のお祭りと言えば、豊作や子供らの成長を神社の神様へご報告するためのもの。
七五三もあるにはあるが、それとは別に、
こちらの里では子供らのお相撲大会というのも企画されていて。
赤ちゃんを睨めっこさせるというような可愛いものではなく、
ちょっとお兄さんになりかけな腕白たちが
小さなお尻を出し、まわしを巻いての本格的がっつり四ツ相撲。
上位3位までには図書券とかお菓子の詰め合わせとかいうご褒美も出るものだから、
中学生の部と小学生の部は高学年と低学年に分けての2部制、
どれへも参加希望者は引きも切らずで。

 「一年生だってのに まあまあ器用で、
  子供会での練習でも負け知らずだって話だけれど。」

あんな小さい体つきの子が、
三年生もいるトーナメントで、
何回戦も続けて仕合うのって大変なんじゃなかろうかと。
負けん気の強い子だと判っていればこそ、前倒しして心配するお人もいるようで。

 「まあ、勢いで勝ち続ければそれもよし。
  もしも不本意ながら早々と負けたら負けたで、」

床屋のおかみさんがちらりと見やった、来賓や役員用のテント下。
統括役のお年寄りたちへのお茶や何やを支度している
里唯一の道場関係の皆様に混ざって、
薬缶だ菓子箱だを運んでおいでのいがぐり頭の小さなお兄ちゃんを見やったものが、
話をしていた相手へも伝わったようで。

 「そっか、ゾロちゃんが仇を討ってくれるのか。」
 「そうそう。高学年の部で優勝してくれようからね。」

くりくりした大きな目を真っ直ぐ向けて来てニコニコ笑う、
無邪気で快活で腕白で、
里の大人たちから満遍なく可愛がられておいでの小さな王子。
そんな彼が自分のお兄さん以上に懐いているのが、
その筋では高名だという剣道道場の長男坊。
そちらはそちらで、歳に似合わぬ寡黙な少年で、
でもでも頑迷なくらいに実直でもあり。
ルフィ坊やの我儘が炸裂しても、
ものの順番は守らせるし、
その上で自分が最大限の頑張りを見せて、何でも叶えてやるところが、
これまた里のお母さま方にこそりとウケているとかで。

 【さぁさ、低学年の部の土俵入りです、拍手をお願いしますね。】

そんなこんなするうちにも、
特設の土俵周りに里の人らが和やかに集まり始める。
里の人気者たちが並んで入場するさまを見送るように、
広場を縁取る原っぱで、
赤や白、緋色のコスモスたちがゆらゆら楽しそうに揺れていた。



  〜Fine〜  15.10.18.


 *うわぁ、
  選りにもよって主人公たち本人が出てこない話になっちゃったよ。
  おっかしいな、
  俺が勝ったら言うこと利かすからなとか、
  言葉足らずにもほどがあるような、
  そんな暴言をゾロ兄へはいてしまう小さな王子様とか考えてたはずなのにな。(笑)
  少し書いては席を立ちという慌ただしい中で書いたのが敗因ですね、うん。

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